生理痛は主に経血内に含まれる「プロスタグランジン」という物質によって引き起こされます。
プロスタグランジンはホルモンの一種であり、子宮を収縮させる働きがあります。つまりプロスタグランジンの量が多ければ多いほど、収縮が強くなり、痛みがきつくなります。またプロスタグランジンそのものが頭痛を引き起こします。プロスタグランジンは腸の運動を促進します。月経前、月経中に下痢をする方がいますが、このためです。
子宮口が狭い場合も、生理痛がきつくなります。理由としては、経血がスムーズに排出されないため、収縮が強くなり圧力が高まるからです。
初潮が11歳よりも早く開始した場合や月経不順もひどい生理痛と関連があります。
その他、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮奇形、子宮頸管強靭症、子宮内膜ポリープ、骨盤内炎症疾患などによって生理痛がひどくなる事があります。
脱水、喫煙は前述のプロスタグランジンの作用を増強します。脱水を避けるには1日あたり1〜2リットルの水を飲みましょう。高い強度の運動をしている場合、2〜4リットル必要になる事があります。
前述の「プロスタグランジン」という物質の作用です。プロスタグランジンは、子宮収縮を促すだけでなく、胃を収縮させる作用もあります。そのため、過剰に分泌されると胃の不快感、吐き気、むかつきを感じます。
「温めるとよい」「冷えは大敵」などという事を聞いた事があるかもしれません。これらの意見には科学的な根拠は全くありません。そもそも山で遭難でもしない限り、深部体温(脳や臓器など、体の内部の体温)が下がる事はありません。手足、皮膚表面が冷たく感じたとしても、臓器の温度は一定に保たれています。脳や臓器の温度が変わらないならば、どこを温めるというのでしょうか。(もしも「手足で生理痛を感じる」という方がいれば、温めてみてもよいかもしれません。)
根本的な解決策としては、経血量を減らすことです。プロスタグランジンの量が減り、痛みも減ります。具体的には低用量ピルを服用することです。低用量ピルにより、月経量が半分以下になります。ある種の低用量ピルは月経周期をコントロールできるので、生理そのものを2−30年に一度だけ起こす、という事も可能です。生理が無ければ、生理痛を感じることもありません。ナプキンなどの生理用品も不要ですから、非常に快適です。「生理は体の悪いものを排出するから、生理が無いのは体に良くないのではないか?」と、勘違いする方もいるのですが、低用量ピルは月経量を減らす(=悪いものが蓄積しない)薬です。
今まさに子作り中である、という場合には低用量ピルは適さないので鎮痛薬を使うしかありません。
生理痛の原因のかなりの割合を占めると言われているのが子宮内膜症です。
子宮内膜症とは、子宮内腔にあるべき子宮内膜(もしくはそれに似た組織)が、子宮の外で発生、定着している状態です。主な症状は生理痛ですが、放置する事によって不妊症を引き起こす事があります。妊娠した際には早産や帝王切開が多くなります。また子宮内膜症を放置すると、その一部は卵巣癌に進行します。
つまり、生理痛を放置しておくと癌に罹ってしまうことがあるのです。
ここで問題となるのが、子宮内膜症は10人に1人がかかるほどありふれた疾患にも関わらず、見落とされる事が頻繁にある点です。なぜなら、ほとんど全ての子宮内膜症は超音波検査では検出できないからです。もちろんCTやMRIでも検出不可能です。言うまでもなく「検出できないから存在しない」という考えは明らかに誤りです。よほど重症であれば、超音波検査で判明することもありますが、そこまで進んでしまっているのであれば、かなり高い確率で手術による治療を要します。
子宮内膜症かどうかを確実に調べるためには麻酔をかけて開腹手術(もしくは内視鏡手術)を行う必要があります。
子宮内膜症の治療法として最も効果が高く、最も副作用が少ないのが低用量ピルです。
実際に、“生理痛がひどいので産婦人科を受診し、一通り検査を受けたが「何も異常はありません」と言われた。鎮痛剤を服用していたが痛みはどんどんひどくなる一方なので何とかして欲しい”と、いう方が低用量ピルをスタートしたところ、2~3ヶ月で嘘のように痛みが消えた、というケースは枚挙に遑がありません。
まとめ
生理痛を放置すると癌になる事がある。
従って生理痛がある場合には、なるべく早く低用量ピルによる治療を受けましょう。
約2割の女性は月経痛を感じない、と言われています。
「生理のたびに痛みを感じる」人は3割、「毎回では無いものの、ときどき痛む」人まで含めると、8割以上の人が痛みを経験しています。「生理のたびに痛みを感じる」人は20代では約半数ですが、40代後半では約2割です。
痛みの程度については、3割以上の人が「かなりひどい」「どちらかといえばひどい」に当てはまります。
確かに「生理痛は出産したら楽になった」という方は存在します。一方、「出産後に痛みがひどくなった」という方も存在します。つまり「生理痛は出産したら楽になる事がある」という表現の方が正しいです。
もちろん非常に高い確率で治ります。
生理前と生理中に出現する頭痛は「月経関連頭痛」「月経関連片頭痛」と呼ばれ、これもやはり女性ホルモンが関連しています。エストロゲンは生理前に減少します。これに伴ってセロトニン(血管を収縮する作用がある脳内物質)も減少するため、脳内血管が拡張し、頭痛が引き起こされるとされています。
この頭痛は、通常の片頭痛よりも症状が長く続き、強い痛みとなって現れる傾向があります。
頭痛の出現パターンが生理周期と一致しているようであれば、まず最初にピルを服用するべきだと言えます。